占星術を実践的に利用する際、象徴は常にさまざまなテーマを同時にカバーしているため、ホロスコープの持ち主を全体として見据える視点を維持するための工夫が必要です。私は心理占星術を学ぶ中で、人生の発達という重要なテーマに意識を集中し続けるための仕掛けが必要だと感じました。マネキンが服を着て、その人に合ったコーディネートを見せてくれるように、発達の概念や洞察のさまざまな側面の具体的なイメージを着せ替えながら、それらをすべて合わせるとどのように見えるかを認識させてくれる何かしらの道具が必要だと考えました。
イソップ寓話の「すっぱいブドウ」の物語に登場する子ギツネは、人生の発達にしばしば無自覚のうちに影響を与える成長プロセスの要点について理解するための、わかりやすいよい例となるでしょう。このキツネの話は、ジークムントとアンナ・フロイトが考えた多くの防衛メカニズムの一つである合理化の例としてよく引用されます。しかし、私は、キツネの話を合理化の例としてだけでなく、防衛メカニズムの概念全体やそれが発達に及ぼす影響として考えるようになりました。つまり、誰の人生でも、象徴的には子ギツネの人生と同じように展開していくと考えるのです。
私がキツネのイメージにあえて「子供」を加え、「子ギツネ」にしたのは、それが大人への成長を前提としているからです。そうすることにより、防衛メカニズムが発達に与える影響に対して象徴的に着目しやすくなります。「子ギツネ」は、子供のころは、背丈が足りず、おいしいブドウに手が届かないので、失敗の苦しみから防衛するために、ブドウを酸っぱいと言って、そのことを考えることさえ避けるようになりました。しかし、大人になり、背が伸びて、簡単にブドウを手に入れることができるようになった今、彼がすべきことは、彼自身が自分の行動を縛るために使ってきた呪文を捨てることです。つまり、ブドウを楽しんで食べることができるように、ライフ・ステートメントを修正すればよいのです。
この客観的な認識を踏まえて自分を振り返ってみると、私たちは自分自身の防衛メカニズムや、それが大人になってからの人生にどのような影響を与えるかを意識化することができます。さて、通常の人間の人生では、とても単純に考えれば、まず、幼少期の家庭環境で一連の行動を身につけ、それが無自覚になり、あたかも生まれつきの感情反応のように感じられるようになります。その後の人生では、無自覚となった最初に身につけた行動パターンを必要に応じて修正しながら人生を進めていきます。それをホロスコープの象徴に結びつけて考えてみましょう。
人間の成長は、出生図により象徴的に表現されています。出生のホロスコープに示される生まれつき持っているテーマは象徴的なものであり、実際にはその象徴のテーマを核にして具体的な行動や感情のパターンが発達していきます。私たちは安心するために過去を繰り返す必要がありますが、これは月の象徴と関係しています。しかし、人生を前進させるためには、時にはゼロから新たに創造することも必要です。これは太陽の象徴と関係しています。地球上のすべての生きものは、この2つのエネルギーを使って進化し、それぞれの成長の道を少しずつ進んでいます。私たちが日常生活を円滑に送るためには、周囲の環境とのやりとりに関してある全体性を持った一定の行動様式(土星)を確立する必要があります。ある方法を身につけると、そのための時間やエネルギーが少なくて済みます。しかし、長い目で見れば、そのような行動様式は次第に古くなっていくので、いつかは捨て去られなければなりません。昆虫と同じように、私たちの行動や精神も、古い構造をときどき脱ぎ捨てて脱皮しながら発達していくのです(外惑星)。私たちは生涯を通じて、さまざまなかたちで行動の構築と再構築のプロセスを繰り返していることを忘れてはなりません。
「子ギツネ」のイメージを触媒として、幼少期に発達した統合されていない未熟な行動と、大人になり(理想的には)成熟し統合された行動を対比させ、それらの間の発達の物語を単純化することで、発達のガイドとなるイメージを創り出すことができるのではないかと私は考えています。実際のワークでは、ゲーム感覚で、クライアントと占星家が、幼少期の経験を質問しながら、早熟な「子ギツネ」のイメージを一緒に探し、発達の材料を集めていくようなセッションをお勧めします。そして、それらの要素の中にある葛藤を解決し、統合を進め、イメージを成熟したものへと発展させることで、クライアントが将来に向けてより幸せになっていくためのガイドを獲得していくことができるでしょう。
私の考える「子ギツネ」の発達の物語は、4つの要因で構成されています:
・半球の強調を中心とした、行動形成に関するハウスに基づいた記憶やその影響。
>表に見えてくる行動の特徴や偏り
・ハードアスペクトやノーアスペクトの天体を中心とした、成長のための緊張。
>行動パターンを形成するプロセスの特徴
・太陽と月のサインを通した必要性や動機の基本的な方向性。
>内面に抱える動機の方向性
・行動を支える、惑星の状態に関連したさまざまな種類の防衛メカニズム。
>行動パターンを維持する要因
ここで、私の考える「発達」の捉え方を占星術の象徴の観点から説明したいと思います。まず、ブロンフェンブレンナーの生態学的システム理論に習い、全般的な視点について考えてみましょう。ある象徴を適用するときに、環境としての集団の全体性(システム)をどの範囲で見ているのか、ということを強く意識する必要があります。実際には、一人の人間を取り囲む集団全体には、いくつもの次元があります。まず、生まれたときは、自分と母親だけで構成される集団の全体性の中にいます。そこに父親が加わって、家族という集団全体(システム)ができあがります。学校に通い始めると、学校というシステムに所属することになりますし、地域社会というシステムに能動的、受動的に参加することもあります。 会社や友人グループ、さらには所属する国も、その人が参加する組織全体のあるレベルになっていきます。
集団が変わるたびに、あるいは同時に関わっている複数の集団が変わるたびに、構造化された行動に一定の変化が求められます。関わる集団の全体性(システム)が変わるたびに、ある種の脱皮が起こり、人は成長していくのです(象徴で言えば、どの次元の変化についてもいつもホロスコープは全体性を持って周囲の環境と反応します)。ですから、このプロセスがどのように進むかを注意深く見ていく必要があります。そこで登場するのが、「子ギツネ」のイメージです。一般的には、成長する前の状態(小さい組織の中で形成されたパターンなど、環境A)と、成長した後の状態(大きい組織で形成するパターンなど、環境B)の2つの環境と本人の心理を比較します。
ここで、イソップ寓話の「子ギツネ」の話を思い出しながら、発達の物語に関するこれらの4つの要因がどのように作用し、行動パターンの構造を作り上げていくのかを説明します。
子ギツネの物語では、美味しそうなブドウが地面から高いところにぶら下がっていて、子ギツネはそれを見つけて惹きつけられます。しかし、子ギツネは背が高くないので、手が届きません。身体を伸ばしたり、つま先立ちをしたり、ジャンプしてみたりしますが、どれもうまくいきません。そして、今度は人生を前に進めようと、目の前のことや、今やらなければならないことに集中しようとしますが、美味しそうなブドウのことが頭から離れません。そこで、彼は、そのブドウを酸っぱいと言って、自分の心から追い出すことにしたのです。さて、ここまではイソップ寓話によく出てくるキツネの話です。しかし、子ギツネのイメージで重要なのは、ここから先、このように形成された「子ギツネ」の行動パターンが、成長して大人になった時にどうなるかということです(子ギツネの「子」をつけたのは、大人への成長の話を強調するためです)。
大人になると、私たちは行動の発達やその結果としてのパターン化について無自覚になります。大人のキツネは、すでにブドウに手が届くほどの背丈に成長した今でも、「このブドウは酸っぱいから食べない」と自分に言い聞かせ続けています。彼は、なぜ、どのようにしてその行動を獲得したのか忘れてしまっていますが、その反応と感情は、自動的にブドウを食べたくなくなる方向に働いているのです。そこで、子ギツネのイメージを使う目的は、そうした行動の発達を客観視して自覚し、大人になったキツネが酸っぱいと言い続けている本当はおいしいはずのブドウを食べられるようになることです。
誰の人生の中でも、何らかの度合いで、何らかの方向性を持ちながら、このような「変容の物語」が進んでいると考えられます。まずは、誰にでも通じるとても単純化した物語を出生図の象徴を利用して組み立てることができればと私は考えました。ここでは、大胆に、「幼少期の環境Aと大人になってからの環境Bは異なる」、という部分のみに注目して「成長プロセスの要点」を考慮します。ホロスコープは同じでも、実際の環境が変わるので、それこそが成長の要点になるのです。具体的な環境の詳細については「わからない」ですが、幼少期と成人してからは大きく変わるポイントがあります。それは、幼少期は「両親に頼らなければ生きていけない」けれど、成人してからは「自分で生きていく力がある」ということ。人間はある環境に長い間いることにより、その環境の中で適切にエネルギーを動かすパターンを身につけていきます。しかし、環境は長い時間かけて変化をしていくので、人間はその変化に適応しきれない部分がどうしても出てきてしまう、それが人生の悩みの種になりやすいわけです。「子ギツネの物語」は、そんな単純化した物語を象徴的に組み立てたものです。
この話の内容を、ホロスコープのシンボルと結びつけて考えてみましょう。
まず、子ギツネがどの方向にジャンプしたかを考えるために、強調されたハウスの半球に注目します。半球は4つあり、南北と東西の2組に整理されるかもしれません。どの半球が強調されているかは、太陽の位置で判断します。太陽があれば、その半球が強調されるのです。また、それぞれの半球にある惑星の数を数えて、どの半球が強調されているかを見ることもできます。この場合、地球より外側の軌道にある逆行する惑星は、反対側の半球にカウントします。酸っぱいブドウは強調されていない半球にあるので、子ギツネは手が届かなかったのです。幼少期、何らかの理由でその方面の経験を積むことが難しく、そのような状況に従って行動も偏りながら発達していったのかもしれません。
次に、ハードアスペクトやノーアスペクトの惑星を見て、どのような苦労があったために、そのような行動をとるようになったのかを考えます。半球の強調が子ギツネのジャンプの方向と一致するなら、ハードアスペクトやノーアスペクトの惑星は、子ギツネがどの程度力を込めてジャンプしたのか、あるいはどの領域でジャンプしたのかに対応します(どんな機能=天体を使ったのか?)。半球の強調は緊張の一般的条件であり、ハードアスペクトやノーアスペクトの惑星は、行動を形成した緊張の具体的条件です。
第三に、太陽と月の位置するサインは、子ギツネが酸っぱいと言ったブドウの中身ですが、実は子ギツネの成長にとって非常に重要です。この重要性とは、理想的に成長していくためにはホロスコープのすべてのハウスに対して太陽と月の光を当てなければなりませんが、なぜか強調されていない半球は後々まで光を当てられずに残ってしまうということです。ホロスコープは、そのような点に気づくためのよいツールとなります。
第四に、防衛メカニズムは、上のように確立された感情や行動のパターンを維持し、もし偏った姿勢を取っていたとしてもそれに耐えられるようにするために働きます。占星術的には、グランドトラインや理想主義的な水星・金星・太陽の組み合わせから、抑圧的な冥王星・海王星のアスペクトや行動的な木星・天王星、あるいはそれらのさまざまな組み合わせまで、さまざまな配置に対応します。「溺れる子は藁をもつかむ」と言うように、子ギツネはホロスコープの中で自分を守るために使えそうなものは何でも利用する、といったところでしょう。そして、一度身を守ることに成功すると、それを使い続けるのです(行動は学習されます)。
行動パターンの心理学的な発達については、アドラーのアプローチから多くのことを学ぶことができると私は考えています。アドラーは「ライフスタイル」について述べていますが、これは私たちが半球の強調から確立しようとした、長期的で全体的なパターン化された行動に対応すると思います。しかし、アドラーは「ライフタスク」についても語っています。これは具体的な行動形成の経験であり、私たちは特定のハードアスペクトやノーアスペクトの惑星を見ることによってそれらを理解することができるでしょう(あるいは、ハウスやサインなどに関連付けながら)。子ギツネは、幼少期に、ブドウを「酸っぱい」と呼びながら、アドラーの言う「ベーシックミステイク」を多く含むような(大人の行動としては)欠陥のある行動をとるようになります。
これらの行動パターンは、特にソーラーアークや遠い天体のトランジット、プログレスの月などの時期表示に関連しながら、実際の経験の印象を心に強く刻みながら形成されていきます。だいたい20歳ごろまでの人格形成期には幼少期の家庭の中で偏った行動パターンが形成されていき、大人になると少しずつバランスを取り戻すようなかたちで人生を通して深まっていきます。これらの成長の過程を理解しながら経験を整理していくことにより、自分らしい人生を創り上げていくための洞察を深めていくことができるでしょう。
では、この過程をコメディアンであり、司会者、俳優、そしてミュージシャンでもある所ジョージさんの人生をたどりながら見ていきましょう。占星術の象徴だけでは、具体的な経験の内容はわかりませんが、鍵となる出生図の天体配置や時期表示をヒントに実際の人生と照らし合わせていくことで、人格形成の重要な過程をたどることができるのです。
所さんのチャートは、水瓶の月、水瓶の太陽です。これは、例えば、「普通とは異なる」特徴を表現していく内面の強力な動機が考えられます。さまざまな経験の背後にいつもこのような動機が潜在的に影響していることを認識します。成長プロセスを考えるためにハードアスペクトやノーアスペクトなどの緊張を含むアスペクトに注目してみましょう(私の表記法では、ノーアスペクトには丸印、ハードアスペクトは中心の円内に直線を使って表記しています。ソフトアスペクトはグリフ同士を曲線で結んでいます)。月と水星、土星冥王星はTスクエアになっており、感情の共有やコミュニケーションなどに関連して長期的で強力な影響力を求めるテーマが考えられます。また、海王星と木星天王星は スクエアとなっており、斬新なイメージの発信の方向性が感じられます。さらに、ノーアスペクトの金星の美意識の模索のテーマも重要そうです。つまり、幼少期には何らかのかたちでこれらのテーマが充足しにくい状況があり、それらについて対処する力をつけていくことが強く意識されるようになると考えられます(アドラーの劣等性に関する理論参照)。
半球の強調は東側(火星以遠の天体が逆行している場合は、反対側の半球に焦点が向くことに注意しましょう)、防衛的に自分自身の特徴を強化していく必要性のある幼少期の行動パターン形成の特徴が考えられそうです。ここからは、気軽な理解や関係づくり、依存などに手が届きにくい環境の特徴が幼い頃にあったのではないかと考えられそうです。つまり、このような環境の中で美意識をなかなか理解されない緊張(金星ノーアスペクト)や感情交流やコミュニケーションにおいて長期的で強力な影響力が思ったように得られない緊張を抱えながら、「普通とは異なる」エネルギーを防衛的に自分の中に閉じこもる方向へ向けて意識するパターンが形成されたのかもしれません。
そして、これらの考察は火のグランドトライン(オーブから離れているが、火の3つのサイン全てに天体が在住)や理想主義(太陽と金星のアスペクト)、安易な行動化(太陽アセンダントと木星天王星の接触)などから構成される防衛メカニズムにより支えられると考えられます。これは、幼少期に偏った行動パターンが、他人に頼らずに自分の中だけで強い動機を維持しようとする傾向(火のグランドトライン)とともに、深く考えずにどんどん(パターンに従って)動こう(安易な行動化)という気持ちが自分にとってはそれがいいんだと呪文のように刷り込んだ(理想主義)結果として定着することによって支えらると考えられます。そう、この部分が子ギツネの「酸っぱいブドウ」になるのです。
大人になると環境はAからBへゆっくりと移行します。大人になり、いろいろな経験が深まっていくと、自然に「手が届きにくい半球」へ向かって成長していくことが理想的ですが、上のような過程で感情がパターン化するために半球の強調に従った行動パターンの特徴が維持されやすくなることが考えられます。つまり、長い間環境Aの中で培った行動パターンは、なかなか環境Bに適したものに修正されていかないかもしれないのです。そして、「現在の悩み」の多くは、この防衛メカニズムにより支えられながら継続している環境Aに適応するための行動パターンが、現在の環境である環境Bではあまり効果的ではないからである可能性がある、と考えてみると要点が見えてくるのではないかと考えられます。私たちの多くの悩みは、多かれ少なかれこの原理が背後に働きながら起きていると考えられるのです。つまり、このこと自体を「子ギツネの物語」をガイドにしながら自覚していくことで、自分らしく成長していくための洞察を得ることができるのです。
「ガイドにする」ということが重要なポイントです。ホロスコープだけでは、具体的なことは何もわかっていません。「子ギツネ」の成長物語の骨組みとして所さんのチャートからわかったことは、幼少期に「自分が変わっている(水瓶)」というテーマを他人にわかってもらいにくく、それでも自分の中では特に美意識(金星)や影響力(月冥王星)を意識しながら独特さ(水瓶)を防衛的に洗練し、しかし、すぐにわかってもらえないこと(ハードアスペクト)に対する気持ちの向け方や対処の仕方を身につけていくだろうということ。そして、それがパターン化して無自覚になると、例えば、「どうせわかってもらえない」などの感情が過剰に働き防衛的な行動パターンが続いてしまいがちになることが予測されるということです。
そして、「どんなふうに?」ということを、ホロスコープの持ち主と一緒にマネキンの服を着せ替えるように象徴イメージを参考にしながら実際の人生経験と関連づけていくのです。そこで「こじつけ」の力と「裏付け」の力をふんだんに発揮しながら、実際の人生の展開における心理的な成長の姿の理解を深めるのです。そのためには、本人の人生経験を聴き出しながら適切に関連付けていくことがとても重要になります。
例えば、Wikipedia によると、所さんは、中学時代に音楽に目覚め、ギターを始めたそうですが、音楽の道には進まず、高校卒業後は、一年間の浪人生活を経て大学に進学。ところが、せっかく浪人してまで入った大学の授業には一度も出ず。しかも、学費納入の手続きをし忘れてしまったことから除籍処分になってしまいます。ここで、「美意識の模索」はギターで音楽をすることが焦点になっていることがわかります。しかし、なかなか他人には認めてもらえず防衛的な姿勢を取りながらも心の中ではずっと強く意識し続けます。東半球の行動パターン形成の様子がこのような部分に重なって見えてきます。そして、結局大学を辞め、音楽の道を目指します。
音楽業界に入ると、「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」の前座として出演するようになりますが、ここで形成された行動パターンの影響が如実にわかるエピソードが Wikipedia に紹介されていました。彼は前座として出演した際、「どうせ、前座など誰も聞いてない」と、ステージ上で餅を焼いて食べるなどしていたそうです。この「どうせ〜だろう」と自ら閉じこもるような行動パターンは、強い緊張と東半球の協調の組み合わせで幼少期に形成されやすい典型的なパターンです。

さて、ちょうどこの頃(1976〜77年)、ソーラーアークの太陽は、出生図の冥王星と月のオポジションに触れています。このタイミングで改めて幼少期に形成された感情や行動パターンが強く意識化され、また、それらが変容していくチャンスがやってきたと考えることができます。もともと冥王星も関わっている配置でもあるので、経験の仕方によっては大きな変容につながる可能性のある時期だったとも考えられます。その後、どんどん活躍の場を増やし、大衆への影響力を培っていくことになったことを考え合わせれば、この経験は最初は反射的に幼少期の防衛的な行動パターンが出て来たものの、思ったより理解してくれる人々もいることを意識化しながら行動が変容していった様子が考えられます。もっとも、大衆に対する影響力は身につけていったものの、本当に理解してほしい音楽(ノーアスペクトの金星)はなかなか理解されていないという感覚もずっと持ち続けていたようです。
後に所さんはインタビューで、
「20代で歌手デビューして、30代ぐらいまでは、「何で売れないんだよ」って思ってたよ。だってそっちを目指してたんだから。最初のうちは逆ギレだよね。「どうせ聴かねえんだろ、お前ら!」って。
そこで音楽を辞めちゃって、司会業としてニコニコ暮らす方向にも行けたわけ。でも、40年もやっていると楽しくなってきちゃって。聴かれない歌をどんどんつくる、みたいな。おかげさまで60過ぎていまだに歌をつくってる。
どこからか面白くなってくるのよ。だからみんなも、途中で「俺には向いてない」とか「つまんない」とかジャッジしないで、やり始めたことはずっと続けた方がいい。人生は長いんだから。
役者さんで売れなくても、会社員になって全部辞めちゃうんじゃなくて、ちょっと匂いのするところにいる。「もう辞めたよ」ってウソついて、内緒でやればいいと思うんだ。」(BuzzFeedNewsより:https://www.buzzfeed.com/jp/ryosukekamba/tokoro-san)
と語っています。
大衆への影響力の追求に関連する月水星冥王星のほか、この金星のノーアスペクトも人生全体の成長の物語を引っ張っていっている様子がとてもよく感じられるのではないでしょうか。
ここで物語の成り立ちをよく考えてみると、あらゆる象徴のあらゆる視点において、最初は、幼少期の環境の中で、「統合できない」「手が届かないものがある」と感じるその人の意識が、その状況を納得し受け入れながら個々の特徴を成長させていく流れがあり、その後、自発的な力を身につけながら大人になり、改めて「統合に向かおう」、「手が届かなかったものに向かって進もう」という方向に向いていくという特徴があります。
このような「子ギツネの物語」が、一人一人の人生の中で具体的にどんな特徴を持って進んでいくのかを占星術の象徴をガイドに理解していくことにより、そのプロセスを意識的に効果的に進めていく助けになるのではないでしょうか。
(出生データ : 所ジョージ 1955年1月26日午前7時4分 JST 埼玉県所沢市 https://seesaawiki.jp/w/fortune_moon/ より)