石塚隆一 – 影響の範囲

この短い記事の中で、私はあまり語られていない、しかし、象徴を実際的に適用する上ではとても重要ではないかと思うテーマについて議論したいと思います。私は、影響の範囲についてお話ししたいと思います。古代の人々は、「上のごとく、下もしかり」という基礎的な原理を教えます。私はこれについて、天の状態(主に太陽系)は地上での物事のあり方に象徴的に対応する、という意味として解釈します。現代では、太陽系というものは太陽を中心に、惑星がその周りを回っているものであり、望遠鏡を使わずに見える一番遠くを土星が周り、人工的な道具を使って認識できる一番遠くの天体の中に冥王星があるということが知られています。

もし、「上」がこのようなシステムに対応するなら、「下」も同様なシステムがなければ象徴がその意味の焦点を持つことができません。これこそ、私がここでお話をしたいテーマ、「影響の範囲」です。私たちが占星術の象徴を特定のものやテーマ、概念、現象などに当てはめるときにはいつも、私たちは前提としている影響の範囲がなんであるかを意識していなければなりません。例えば、母親について話すとき、文脈による違いを考慮する必要があります。ある大人の人物が、人それぞれの価値観が違うと、母親もそんな一般の人々の一人として変わらないと理解している場合、ある場面においては母親は10ハウスではなく7ハウスで示され、母親がその人の行うことに対して何らかの意見を言った場合にそれほど大きく感情的に影響されないかもしれません(幼児が親に叱られるときのようではない)。別な例で考えれば、マンデン占星術では、7ハウスはある「影響の範囲」(国単位の国際社会次元)の下では、国交のある相手の国とのやりとりを示すでしょう。しかし、同じ7ハウスは、考察する「影響の範囲」によっては、会社と会社の関係(会社と業界の次元)や個人と個人の協力関係(個人個人の次元)とさえ考えることができるのです。  

この議論の目的のために、私は個人と環境(あるいは集団)の間の相互作用を分析するために便利なかたちで組織化された10天体からなる単純化したモデルを提示します。図1を見てください。集団の定義は、特定の目的のもとに集まった2人以上(ここが重要)からなる人々の集まりです。つまり、理論的には、ある人物は同時にとてもたくさんのさまざまな種類の集団に属することができるのです。

これは、人間が特定の集団意識をどのように獲得するかを理解するためのモデルです。(人間は多くの集団意識を同時に扱っていると私は想定しています)第一に、このモデルでは、メインの人物は左下に描かれた5つの天体により表されます(「個人(individual)」)。これは、自分自身を主観的に意識する個人です。個人は中心に太陽と月を持ち、金星と火星が地上の活動を通してその動機を表現・行動化することを助けます。個人の内部の水星はすべての相互反応に注目し、それらを賢く扱おうとすします。右下には同じ集団に属する他の人々が同じ5つの天体により描かれています(「相互作用(interpersonal)」)。これらは、人々の間の相互作用を通して獲得される意識を表しています。

私は、5つの社会天体を「共通(common)」と定義します。なぜ、「共通(common)」という言葉を使うかというと、ここではさまざまな範囲の集団を扱うからです。2人でさえ集団と呼ぶので、「共通(common)」という言葉は、私たちが何を注目しようとしているかをよりはっきり意識させると考えました。このようなシステムの視点に基づけば、木星は火星の集団化の焦点と考えられます(個々の火星の表現を総合したもの)。土星は太陽の集団化です(個々の太陽の表現を総合したもの)。天王星は、金星に対応し、海王星は水星に対応し、冥王星は月に対応します。

興味深いポイントは、月や水星、金星はそれぞれ心理の内面を意識化する次元で働く(地球の軌道の内側)ので、私たち個人は自分自身の月や水星、金星を自分で見ることができるが、他人の月や水星、金星を直接見ることができないということです。他人の月や水星、金星については何らかのかたちでそれらの内容を本人に表現してもらわない限り困難なのです。私たちは、例えば、顔の表情(金星)、言葉(水星)、長期的な観察(月)など、他人の月や水星、金星について考えたり感じたりするための何らかの手がかりになるものは持っています。長期的には、例えば、2人からなる集団でも、このような種類の経験の特徴的な記憶を十分積み重ね、その集団の天王星、海王星、冥王星を形成するようになります。もちろん、人々がお互いを表現し、主張し、合意を取り付け、集団の道徳や秩序としてかたちづけられたものは、その集団の木星や土星となります。

個人の視点から見れば、その人が属するそれぞれの意味のある集団全てとの間にさまざまな木星から冥王星の5天体に対応する意識や感覚が発達してきます。そして、私たちは無意識にこれらを適切な集団に対応するように切り替えているのです。

しかし、実際の人生では、私たちは成長していく中で、頻繁に関わる集団を少しずつ変化させていきます。そして、天王星、海王星、冥王星の3つの天体に関する感覚については、直接見えない経験の積み重ねから形成しているため、私たちはそれらを調整することに困難を経験しやすいのです。パーソナリティや行動の発達については、このような社交的な相互作用のモデルを使った分析を行うことでとても理解が深まります。

心理学の分野では、ユリ・ブロンフェンブレンナーは、生態学的システム理論と呼ばれる素晴らしい人間の発達モデルを考案しました。この理論の中で、ブロンフェンブレンナーは、人間の重要な成長が起こる発達の環境を4つのシステムに分類しました(図2を参照)。Wikipedia によると、「マイクロシステム」は、その人の発達に対して最も身近で直接的に影響を与える集団、あるいはシステムです。「メゾシステム」は、マイクロシステム同士の相互関係です。「エクソシステム」は、本人は直接役割や関与する文脈を持っていない社交的な設定同士の関連性です。そして、「マクロシステム」は、個人がその中で生きている文化を描写します。

例えば、2人以上のメンバーを持つ集団をシステムと定義しましょう。私たちはその人が属するさまざまな集団、例えば、母親 と子供、父親と子供、兄弟、家族、近所、学校の友達、会社、結婚…などを分析することでその人の発達を追跡することができます。本人に直接関係を持つ集団はマイクロシステムです。したがって、私たちは多くの異なるマイクロシステムを同時に、あるいは次々と順に持つことができるのです。土星を例にとって考えてみましょう。私たちの母親と子供のシステムで経験した土星 の内容と、近所のシステムの中での私たちの経験は異なるかもしれません。それらの違いは、構造や秩序を尊重したり責任を引き受けたりなどの土星的なテーマとどう取り組んでいくかという意識の発達を刺激します。影響の範囲を意識していれば、過去、現在、未来においてさまざまな規模で関与するかもしれない異なる集団やシステムを意識的に注目することができます。そして、それぞれの天体のテーマに関する意識の発達を刺激するのは、このようなシステム間の違いやその結果形成されてくるスキーマの違いです。

象徴を直接触れている環境に適用することを考えるときには、私たちはその人のマイクロシステムに注目をするでしょう。しかし、同時にメゾシステムやエクソシステム、マクロシステムなどのさまざまな次元のシステムがいつもいっぺんに働いていることを忘れないようにしましょう。

私たち占星家は、このようなブロンフェンブレンナーの概念を、さまざまな大きさの「太陽系」というシステムを重ね合わせていくことにより理解を深めることができるでしょう。例えば、その人に関するある特定のメゾシステムが、彼の特定のマイクロシステムに対してどんな影響を与えているだろうか、それが長期的に彼のマクロシステムの感覚にどのように影響を与えるだろうか、などの視点を作りながら対応する「太陽系」の姿を想定しながら分析を深めることができるでしょう。

また、私は単にマイクロシステムだけに注目して考えてみることでさえ、木星から冥王星までの意識をしっかり追跡し感覚を掴むことに大きく貢献すると考えます。例えば、カール・ユングは父親との間で「内的な基盤を持たない形式的な信仰というものに疑問を感じ(土星ー冥王星、太陽ー海王星)」、後に同様なテーマをフロイトとの関係の中でも強く意識化し、中年の危機のきっかけとなっていきます。ユングの人生の中で、人生の位相に合わせある同じテーマの理解が異なる環境の中で発達していったのです。そして、私たちはこのことをユングの「太陽系」の範囲を、まず、父親との関係、そしてフロイトとの関係に重ねながら分析をすることにより追跡することができるのです。

社会構築主義の視点では、外惑星の領域でさえ個人個人が活発に参加していることが理解できます。したがって、私たちは個人を理解するためには、外惑星も含んだそれぞれの天体の領域に関連する経験の発達について追跡していく必要があります。それを行うために、「影響の範囲」をしっかり意識することが必要なのです。

この短い議論が、占星術の象徴を実際の状況に関連づける際に、「影響の範囲」について考慮するきっかけになれば幸いです。

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